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はじめていくつか単文書いたんだけどどうかな?
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0001ジョン・スミス
垢版 |
2018/10/10(水) 05:04:43.77ID:5YXNQdw9
ある二人の男が立って話している。訥々と喋っているのか、のべつまくなしと話しているのかはわからない。二人の名はわからないが、男だ。特徴はあるのかも知れないが、模糊としてわからない。なぜ男とわかるのかも、わからない。
男たちの立っている、埃に煤けた無表情な道には、無機質な壁がそびえ立っていた。頑強で、高く、それでいて灰色で無機質な壁。悲しみだとか喜びだとか、そうしたものを一切排斥したような壁だ。
壁のわきには、暗渠へと続く用水路が流れている。水は澄んでいるとも汚れているともつかないが、灰色に映った。
おおよそ、この壁の辺りには澄明な光やら赫奕とした光もないし、莞爾と笑う人間もいなければ、それを磊落に笑う人間もいなかった。
男の背の高い方が喋った。
「この壁に色を塗ったらどうかな?」
低い方が続く。
「いや、どうなのだろう。この場に色は似合うのか」
「わからないけれども、何となくね」
男たちもまた、色のないという形容が似合った。道行く人々も色がない。無表情だ。顔に色がないといっても誇張でないように、皆なにかを目指して歩いている。歩いていないのは、二人の男だけだった。
0002ジョン・スミス
垢版 |
2018/10/10(水) 05:05:39.18ID:5YXNQdw9
「僕たちもなんだか、色がないね」
背の高い方が呟く。
「そうか? 俺は青いズボンを履いてるぞ」
「いや、そうではなくて、比喩さ。皆が皆色があるものを身に付けてはいるけれども、何だか無機質なんだ」
灰色の月が空を牛歩している。
「じゃあ壁に色を着けたって同じことだろ? 俺はそう思うね」
「だが、公理を変えるのは些細な出来事、僕はそう思うけどなぁ」
「そうだな、じゃあ塗ってみようか」
男たちは、壁を塗り始めた。赤や黄色のインクが壁を飾り、周りが明るくなった。
男たちは汗を拭く。
「色が、着いたね」
「着いたな」
男たちが笑顔で周囲を見渡す。
先程まで歩いていた人々は、男たちを見た。悲しいような、それでいて冷たい視線で。
男たちが鼻白んでいると、突如壁は男たちめがけ倒れてきた。
隙間から、血が流れる。その血も、水銀のように用水路に吸い込まれ暗渠へと消えた。
ゆっくりと壁は元に戻る。男たちの仕事の跡は消え、再び無機質な灰色を浮かべている。
人々は、それを見るとまた無表情に歩き始めた。灰色の月が黒い空を牛歩する。
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