Y. Souvenir

美術館に入った。予想通り寒かった。この間、服を買ってもらったお返しとまでは言わないが、入館料は僕が払った。入場券を手渡すと、詩織さんは親指を立てて、「わかってきたじゃない」と言った。

美術館では特に面白いことは起きなかった。普通に作品を見て回って、普通に時間が過ぎていった。観覧した後、館内のカフェでお茶を飲んだ。

「君は何で美術館を選んだの?」詩織さんが聞いた。
「うーんと、お互いに興味のあるところだからですかね」
「まあ別にいいんだけどね。それ、私に気を遣ってるでしょ」
「はい、多少は」
「場所はどこでもいいんだけどね、自分が楽しめるところじゃないとダメだよ。相手を楽しませるんじゃなくて、自分が楽しむことの方がよっぽど大事だから」

帰り際には、ミュージアムショップへ寄った。たくさん並んでいるポストカードの中から、詩織さんは迷いなく一枚を取っていた。