スナック眞緒物語♯2(その8)
久美はまだすっきりした顔をしていない。
「それは納得した。でもね・・・・」
「まだ何かあるの?」
「現実と虚構の区別がつきにくくなったということもあるの。
あの日以来、楽屋の扉をちょっとだけこっそり開けて、あのコたちをちょくちょく覗き見するようになった」
「悪趣味ね」
「で、生(なま)の言動なのかエチュードなのかが分かりにくいときがあるの。
普通に話しているのかと思ったらエチュードだったり、逆にエチュードだろ思ったら普通に話していたりで、訳が分からなくなってしまう」
「覗き見なんかするからバチが当たったんだわ。
でも、訳が分からなくなるというのは覗き見しているときだけでしょ?
だったら心配することはないんじゃないの?」(続く)