『栽培植物と農耕の起源』中尾佐助

栽培植物は人類のテクノロジーの結晶だ。
栽培植物を調べるだけで、その地域の古代の文化が分かる。
本書の試みは、栽培植物が指し示す文化を「農耕文化基本複合」という単位とし、文化の新たな分類を作ることだ。

栽培植物を基準に文化を分類することにはメリットがある。
文化の潮流を辿りやすいことだ。
栽培植物のゲノムを解析することにより、どれがより多く改良が加えられた品種なのかが分かる。
これにより、ある栽培植物が地理上のどんなルートを通って伝播していったのかが分かる。
宗教や言語の潮流を明晰に分かる。
こうして、全ての文化の発生源となる文化が4つに分けられた。
根栽農耕文化・サバンナ農耕文化・地中海農耕文化・新大陸農耕文化の4つ。

根栽農耕文化は、今のマレーシア附近が発生源。
主要作物は、サトウキビ・タローイモ・ヤムイモ・バナナ。
サバンナ農耕文化は、今のマリ(アフリカ)附近が発生源。
主要作物は、ササゲ・シコクビエ・ヒョウタン・ゴマ。
地中海農耕文化は、今のパレスチナ附近が発生源。
主要作物は、オームギ・エンドウ・ビート・コムギ。
新大陸農耕文化は、今のメキシコ附近が発生源。
主要作物は、ジャガイモ・ナタネ・カボチャ・トーモロコシ。

日本は、根菜農耕文化の温帯適応型である「照葉樹林文化」に属する。
クズ・ワラビを食用とするのは、この文化特有だ。

宮崎駿は、この本から影響を受けた人物だ。
「ぼくに、ものの見方の出発点をこの本は与えてくれた。」と言っている。
『もののけ姫』の原生林は、西南日本が属する照葉樹林文化を描いている。

塩なめさんがこの本を手にとったのは、そのことを知ったからだ(´・ω・`)