Bマグネシウム
マグネシウムは生体内に約 30 g 存在し,骨に約
60 %が,約 20 %が筋肉,残り約 20 %が他の軟部組織
に,わずかに約 1 %が細胞外液中に存在する.マグネ
シウムも多くの酵素反応やエネルギー産生に関与して
おり,ATP 産生に関わる全ての酵素活性にはマグネシ
ウムが必須である.マグネシウムは野菜や魚介類に多
く含まれているが,精製加工された穀物食品には少な
く,清涼飲料水摂取はマグネシウム摂取量減少の原因
となる.これまでにマグネシウム摂取量低下がインス
リン抵抗性や糖尿病と関連することが明らかにされて
いる.13 の前向き試験のメタアナリシスを行った研究
では,マグネシウム摂取量と糖尿病罹患リスクは負の
相関を持つことを認めた(相対危険率 0.78[95 %信頼
区間 0.73-0.84]).これらは地域性,追跡期間,性,糖尿
病家族歴とは無関係であった.BMI>25 において特に
その関連性は強くなり,マグネシウム摂取量が
100 mg-
日増える毎に 2 型糖尿病の相対危険率は 0.86
となることが明らかとなった3)
.糖尿病患者は血清マグ
ネシウム低値を示し,マグネシウム補充がインスリン
抵抗性を改善すること,同様に糖尿病モデル動物への
マグネシウム投与が病態を改善するとの報告が多い.
細胞内マグネシウム欠乏は,インスリンシグナルのチ
ロシンキナーゼ活性低下によるインスリン分泌を障害
することやインスリン抵抗性を惹起することも明らか
にされている.従来の和食と比べて欧米食ではマグネ
シウム摂取が不足するため,至適範囲量のマグネシウ
ム補充は糖尿病予防および治療において有効と考えら
れる.

見直される糖尿病の食事療法
5. 糖尿病と食事由来金属元素
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/56/12/56_919/_article/-char/ja/