これら数値から脂質と炭水化物の摂取量、更に植物性タンパク質を調整しても、有意な差異は認められなかった。
しかし、動物性たんぱく質を調整すると有意に低減した。
このことは、タンパク質が全原因死亡と癌リスクに相関し、而も、動物性たんぱく質が関係することを示している。
低タンパク食群と比べて中程度タンパク食群では、がんに因る死亡リスクは3倍(ハザード比:3.06; 95% CI: 1.49–6.25)で、動物性たんぱく質を調整した時のみ低減した
(ハザード比:2.71; 95% CI: 1.24–5.91)。
年齢45–65歳の人たちでも結果は同様であった。

66歳以上では、高タンパク食は全死因死亡とがん死亡リスクとは逆相関したが、糖尿病死亡リスクとは相関した。
低タンパク食に比べて、高タンパク食の全死因死亡リスクは28%減 (ハザード比:0.72; 95% CI: 0.55–0.94)、中程度タンパク食では21%減(ハザード比:0.78; 95% CI: 0.62–0.99)だった
。高タンパク食では癌のリスクも60%低減した(ハザード比:0.40; 95% CI: 0.23–0.71)。
脂質/炭水化物/動物性たんぱく質を調整しても、リスクの低減は認められなかった。
因みに、糖尿病に因る死亡リスクは10倍を超えた(ハザード比:10.64;95% CI:1.85–61.31)。

インスリン様増殖因子1(IGF-1)がタンパク質と死亡率との関係に及ぼす影響について調べた。
高タンパク食は GHを介してIGF−1シグナルを活性化させる。
IGF-1レベルは、50〜65歳及び66歳以上の両群のタンパク質の摂取と顕著に関連する。
IGF-1はタンパク質の摂取と死亡率の関連には起因しないが、
重要な調整因子(moderator)であることが分かった。

50〜65歳では、低タンパク食と比べて高タンパク食では、がんに因る死亡リスクはIGF-1が10 ng/ml増える毎に9%高まった(ハザード比:1.09; 95% CI: 1.01–1.17)。

高齢化に伴ってIGF-1濃度が下がることが分かっているが、66歳以上では、低タンパク食に比べて高タンパク食/中程度タンパク食のいずれも、IGF-1レベルが低い侭だとCVDによる死亡リスクは低減した。しかし、IGF-1が増えると利点は認められなかった。

がん細胞を移植したマウスを用いた試験でも、高タンパク食によるIGF-1濃度の亢進とがんの因果関係が認められた