遺稿



洗剤吹き

あはれ、あはれ、落ちん子は
いつかはこころやすらはん。
皮膚をみれば紅に、
尿を見れば褐色で
沈子をみればしおれにけり。



洗剤悶

過去見ざりせばなかなかに
そらに忘れてやまんとや。
沈子の煙もひとすじに
立ちての跡はかなしとよ


手袋

あなたは今日は緑色の
ラッテクスの手袋をしていますね、
いつもはきれいなしなった手に。
私はあなたの手袋の上に
針のように尖った洗剤を見ました。
その峯はなにか私の額に
チクチクする雪を感じさせるのです。
どうか手袋を取らずにください。
私はここに腰かけたまま
じっと一人感じなければならないのです。
まっすぐ皮膚直下を刺している雪を。