目の前に現れる彼が、ほんとうに彼なのか解らないまま、
彼が怒っていると云えば、彼が怒っていると思う以外はなく、
あなたは本当に彼なのですか?と聞き返しても意味がない。

彼は、怒っているのだから。

つまり、誰にとってもそういう人は必ずいるとは思うのだが、
誰かを記憶してしまった人であるならば、その誰かはその人に怒ることが可能であり、
怒ってきたその誰かがたとえ別人の変装であっても、記憶した人にしか見えない限り、
その人がどれほど怒っていたか?というのを理解しなければいけない事柄のように
聞き続けなければいけない。

誰かが誰かに対し、不満があるという部分は、
不満を抱いた側が相手に伝える時間のあいだ、
だれも裁くことができない。

〜あなたにこのような不満があります〜

たとえそれを告げる時間が何年であったとしても、まだ全部を話してない、
と訴える間は、相手に予定でも出来ない限り、頭の中の声を塞ぐ事は出来ない。

それが、記憶した顔を借りた<神の変身>であっても。

── 死後の世界では、このような時間が待ち受けている人もいるだろう。

だが、私はまだ、地上にいる。地上に残されている理由は、
まだ、地上に浸透していない出来事を誰かに知って貰う為かもしれない。