大学1年のとき、旅行社の広告に、「ソウルの大学でハングル夏季40日間研修」 とあるのが目にとまり、軽い気持ちで申し込みました。
母が当時流行の韓流ドラマにはまっていたため、費用をすぐ出してくれたことも理由のひとつです。
ソウル仁川空港に着くと現地駐在員が出迎えて、大学まで連れて行き、登録や入寮の手続きを手伝ってくれました。
 
クラスメートは日本人がほとんどで、その他台湾、シンガポールから来ていました。
「入門コース」のはずが、日本人の多くはハングルに年期が入っています。
さっそくできる者ばかりでグループをつくって盛り上がっていました。
初心者のなかには、できる人にとりいって、その仲間にいれてもらう人もいましたが、
超初心者の私はとけ込めずに後ろの席に淋しく座っていました。
 
授業は私にはペースが速すぎました。
喧噪のソウル市街は地名表示も看板も読めず、数日で私は寮の部屋に引きこもってしまいました。
仁川空港で会った旅行社の現地駐在員が様子見に訪ねてきて、
「大学にボランティアのインストラクター制度があるので頼んでみましょうか」 というので、ありがたくお願いしました。
 
翌日大学の国際交流センターで女性のボランティアを紹介されました。
いま三年生で、卒業したら日本に留学し、どこかの大学の大学院に入学する計画ということでした。
すでに日本語を学んでいましたが、「日本人学生の世話をすることで、もっと上手になろう」 と思ったそうです。
 
その日から授業の予習・復習はもとより、買い物から携帯電話の購入まで、彼女がこまごまと教えてくれました。
「大学の食堂ばかりではあきるだろうから」、とアパートで夕食を作ってくれることもありました。
地獄で仏にあったような気持ちで、彼女の指示がひとつひとつありがたいでした。
こうして授業にもなんとかついていけるようになりました。