0031名無虫さん
2015/05/20(水) 18:22:39.30ID:???手話を覚えた(っていうか覚えさせられた)チンパンジー、ルーシーの末路の話。
ルーシーはといえば、それまで頭に詰め込まれた単語をすっかり抜き取られ、ジャングルに解き放たれた。
チンパンジーの住むべき場所はそこだと、飼い主のジャニス・カーターは考えたのである。
しかし、ルーシーの意見は違っていた。十一年間も人間社会で生活してきた彼女にとって、
眠るならいつものマットレスの上がいいし、飲み水はボトル入りのミネラルウォーターと決まっていた。
寝る前にマガジンラックの雑誌をぱらぱらめくるのも、ルーシーの楽しみのひとつだった。
そんな彼女が唯一嫌いなものといったら、キャンプしかない。
このため、ジャングルに連れてこられても、えさを一切調達しようとせず、
「エサ。ハヤク。ルーシーニチョウダイ。モット、エサ。ハヤク、ハヤク」とせがんだ。
ジャニスは甘やかされたやんちゃ娘をほとんどけるようにして森に追いやったうえに、
生きたアリの食べ方まで実演して見せた。
この話でとりわけ痛ましいのは、言葉を奪われてしまったことである。
ルーシーがいくら質問してもだれも返事をせず、話をしても知らんぷりだった。
二年後、昔なじみがアフリカのルーシーのもとを訪ねると、彼女は囲いの端に駆け寄り、手話で、
「オネガイ、タスケテ、ココカラダシテ」と救いを求めた。もちろん、それはむなしい願いでしかなかった。