>>111続き
研究チームは、2008〜2010年、土地の性質(農地・村・常緑樹林・針葉樹林など)と放射能汚染の度合い、
積雪にみられる動物の軌跡を調査しました。また、今回の研究には、1987〜1997年のヘリコプターによる
調査結果も使用されています。しかしその結果、彼らの立てた3つの仮説はすべて否定されました。
チェルノブイリに生息する大型哺乳類に、放射能汚染の長期的影響はみられなかったのです。
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上のグラフ2つは、オオカミとヘラジカの軌跡と、土地の汚染度の相関を示す。
下のグラフは、1987〜1997年にかけてのヘラジカ・ノロジカ・イノシシの分布量の変遷。

かつての調査では、事故から数ヶ月後の時点で、『立入禁止区域』の約4,200km^(2)において放射線の大きな
影響がみられ、野生動物の数はあきらかに減少していると報告されました。しかし、それから約30年の月日
が経過して、野生動物たちがふたたび繁栄をみせているのです。

たとえば、ヘラジカ・ノロジカ・アカシカ・イノシシといった動物の場合は、比較された4つの自然保護区
とほぼ同じ数が生息しており、またオオカミに至っては、じつに7倍もの数が生息していました。キツネ・
イノシシなどの動物は、放射線量の高いエリアでもその数が減少していなかったのです。
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さながら地上の楽園
イノシシは1994年に大きく減少したが、これはオオカミの増加とアフリカ豚コレラの流行が原因とみられる。

研究チームのひとりである、ポーツマス大学のジム・スミス教授は、原発事故が与えた社会的・心理的・経
済的影響について認めたうえで、このように述べています。「純粋に環境面だけを見るかぎり、現時点で
は、事故は環境面には深刻なダメージを与えていない。偶然にも事故によって、ある種の自然保護区がつく
られたのだ」。