>>87つづき

イモムシたちのにぎやかなおしゃべり

 マスクト・バーチ・キャタピラーの成長には5つの段階がある。そのうち、糸で作ったシェルターの中で共同生活を送るのは第2段階までだ。第3段階になると、それぞれ1匹だけで生きていく。

 ヤック氏ら研究者のこれまでの観察では、集団生活を終えた幼虫たちは、振動を使って自分の縄張りを知らせ、他の幼虫を追い払うことが分かっていた。

 その際、お尻で葉を叩いたりこすったりするのと同時に、幼虫は口器でも葉を叩くか左右にこするかして振動を起こす。

 ヤック氏が不思議に思ったのは、集団生活をする幼いイモムシたちも、会話をするかのように複雑な振動をお尻で作り出していることだった。
しかも、この行動はよそ者の接近がないときも観察された。(参考記事:「【動画】絡み合うタコの「会話」を初めてとらえた」)

「餌を食べているとき、イモムシたちは『ムシャムシャムシャ、お尻をゴシゴシ。ムシャムシャムシャ、お尻をゴシゴシ』といった調子なのです」とヤック氏。

「さらに、彼らがシェルターを作っているときも、少し働いては葉をこすって振動音を出していました」

 この理由を確かめようと、ヤック氏は野生のマスクト・バーチ・キャタピラーの幼虫を捕獲。研究室でカバの小枝に載せ、仲間の研究者たちともに振動と行動を記録した。