サッカー日本代表 西野朗監督
最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。
当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、始めます!

「自分の心情としては不本意。選手たちにブーイングを浴びながらのプレーをさせてしまった」

――サッカー日本代表 西野朗監督(6月29日朝日新聞夕刊)

ワールドカップロシア大会1次リーグ最終戦における終了10分前の日本の戦い方が議論を呼んでいる。
ポーランドに0−1の劣勢の日本だったが、セネガルとコロンビアの試合でコロンビアが1−0でリードしていたため、このまま試合が終了すれば、警告数の差で決勝トーナメント進出が決まる。
そこで日本がとった戦術は、危険を犯すことなく自陣でボールをまわし、試合終了を待つというものだった。

この作戦は、日本では概ね好意的に捉えているようだ。
チームの目標として掲げたベスト8を実現するために、「名を捨て実をとる」作戦であり、「結果」を得るためのやむを得ない、むしろ勇気ある選択だったという意見が多いように感じられる。
いわく「サッカーの試合で時間稼ぎをするのは珍しいことではない」。

だが、勘違いしてはいけない。サッカーで通常行われる時間稼ぎは、勝っているチームが行うものだ。
日本は、負けを確定させるために時間稼ぎをした。スポーツの試合において、互いが勝利のために全力を尽くすというのは、当たり前のことだ。
日本が行ったのは文字通りの敗退行為であり、目前の試合の勝利以外の利益を求めた“八百長”だ。