半ば強引に中を覗くと、和服の熟女が科を作り俯き加減でこちらにうなじを見せていた。
「あの、突然失礼致します。もしかして昔△□町のグリーンリーブス荘に住んでいた香耶さんではありませんか?
俺は隣に住んでいた、あの…ちょっとエッチな悪戯された…8歳だった、俺を覚えていませんか?」
彼女は俯いたまま顔をあげない。静寂が個室を覆う。
「イイじゃん、やろうよ」蚊の鳴くような声…
「え?」もう一度声をかけようとしたその時、一瞬速く店内の時計が鳴った
「ホー、ホー、ホー…」
流石フクロウの森。鳩時計ならぬ梟時計か…なんて頭をよぎった次の瞬間、香耶も鳴き始めた。まだ俯いたまま。
「ホー、ホー、ホー…」
「え?香耶さん?」

ドクン!

背後から凍てつく波動を感じた。
見てはダメだ。
が、強く念じても振り向かずにはいられない。
そして、目が合ってしまった。二つの…否、六つの…
フクロウのような黒目の大きい、吸い込まれそうな漆黒のブラックホールのような無機質な目
ウエイトレスに扮している
美海と…
七海と…
愛理だった…
「嫌な予感はしてたんだよ!店名がもうアウト!どうすればいいんだよ〜!」
俺は店内に響き渡るくらい半泣きで絶叫した。
そしてタイミング良く梟時計も鳴き終わった。

『ガハハハハハ』

嘘だろ?
埃っぽい、カビっぽい、線香の香りが混じったあの匂いの主が背後で揺らめき、そして笑った。
振り向けば人妻
ショタコン香耶が漆黒の目で笑っている。が、目は笑っているが心は泣いているようだ。
「まだ、誰のものにもなっていないの。人妻と呼ばないで…」
俺の中で、香耶の中で何かが音を立てて壊れた