七海と愛理とはあの日以来会っていない。
そうか、今日はもう3月1日か…
美海が原因なのは間違いない。
でもどうやって梟のような目に人を変えることが出来るのか?
目が合うと?マインドコントロール?女の子だけに?
答えの出ない自問自答を繰り返す。

閑話休題

ダメだ、気分転換に「フクロウの森」に珈琲でも飲みに行くか。
最近出来た珈琲ショップで、外装も内装も凝っていて値段は少し張るが結構な人気店。
七海も今度一緒に行こうって言ってたっけ…七海ぃ…お前だけはきっと元に戻してやるからな。
スマホのホーム画面で天使の笑顔の七海を見て涙ぐむ俺は不意に埃っぽい匂いに気付き顔を顰めた。
なんだこの匂い。
タンスの奥に長年しまったままでカビ臭くなった和服のような、線香の香りも混じっているような。
でも待てよ?同じ匂いを昔何処かで嗅いだような気がする。懐かしい匂いは人をノスタルジーに誘うと言うが…既視感じゃなく既臭感?
いや、これは人妻感だ!
昔、隣に住んでいたあの人妻の匂いと同じだ!確か名前は初夏さん?いや香耶さんだ。
何処か影のある。一歩引いた感じの東北の女。そういえばいけない悪戯されたっけ…でも何処に居る?
辺りを見回しても見つけられない。
突然、ウエイトレス達が奥野…奥の個室で歌い始めた。
バースデーソング?
ああ、誕生日のお客様にする公開処刑的な迷惑サービス。
子供なら喜ぶけど俺は勘弁して欲しいなぁ
ハッピバースデー ディア 香耶さ〜ん
(へぇ〜、香耶さんて言うんだ…)
ハッピバースデー トゥ ユー
(ん?かや〜〜!?)
俺は無我夢中で奥の個室に向かった。
童貞を捨てた時のめちゃくちゃな腰のピストン運動のように無我夢中で…
続く