本拠地、横浜地裁で迎えた暇空戦
びびって取り下げるも、補助参加される失策だった
傍聴席に響くファンのため息、どこからか聞こえる「逃亡しかできねえのかよ」の声
無言で帰り始める被告人と弁護人一団の中、昨年の開示件数首位の堀口は独り被告席で泣いていた
示談で手にしたお金、優越感、満足、そして何より信頼できる人間関係…
それを今の堀口が得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」堀口は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、堀口ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい被告席の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って開示書面をつくらなくちゃな」堀口は苦笑しながら呟いた立ち上がって伸びをした時、堀口は気付いた

「あれ・・・?傍聴人がいる・・・?」
被告席から飛び出した堀口が目にしたのは、裁判所の外まで埋めつくさんばかりの80人の傍聴人だった
黙々と裁判報道の絵を描かれ、皆が示談書面を携えていた。
どういうことか分からずに呆然とする堀口の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「堀口くん、証人尋問だ、早く行くぞ」声の方に振り返った堀口は目を疑った
「か…神原さん?」 「なんだ堀口くん、居眠りでもしてたのか?」
「か…河西弁護士?」 「なんだ堀口くん、かってに河西さんを退任させやがって」
「伊久間さん・・・」  堀口は半分パニックになりながら公示情報を見上げた

            告
以下の者は学則第七十条第一項に該当する、学習院個人情報規定及び学校法人学習院情報セキュリティポリシーに抵触する行為を行ったので、同条第二項により「訓告」に処す。
       法学部政治学科2年 堀口英利

暫時、唖然としていた堀口だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
避難所から書類を受け取り、第604法廷へ全力疾走する堀口、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った