●統合失調症の人を病院に連れて行くのは大変

――「医療機関につなげる」というのは、統合失調症の疑いがある依頼者を病院に連れて行くということですか。

単純に言えばそういうことですが、統合失調症の人を病院に連れて行くのはすごく大変です。
本人は病気の自覚がないので、本人に直接、「統合失調症かもしれないので、病院に行きましょう」などと言ってはいけないからです。
そんなことを言うと、怒って帰ってしまう人もいます。

そこで、家族がいる人なら、まずは家族に連絡して、「おたくの息子さんが当社に相談にこられたのですが、精神疾患かもしれません。
病院に連れて行かれてはどうでしょうか」などと持ち掛けます。
一方、独身や一人暮らしの人だと、僕が自らクリニックや病院まで連れて行くしかありません。
その場合、言い方がとても難しいですね。

――どのような言い方をするのですか。

クリニックの先生から「肯定してはダメ。共感するように」と教わり、そのような言い方をしています。
たとえば、集団ストーカーの被害を受けているという人には、「僕には、あなたが本当にそういう被害を受けているかはわからないですが、
そんな状態だったら睡眠もとれずに大変だったんじゃないですか」などと言います。

すると、心を開いてくれる人がいるのです。今まで周囲の誰にも信じてもらえず、妄想だと言われているからです。
心を開いてもらえたら、「僕も以前、眠れないことがありましたが、クリニックに行ったら頭が冴えてきましたよ。
よかったら、一緒に行ってみましょうか」などと誘うと、「じゃあ、ちょっと行ってみようか」と応じてもらえることがあるのです。

――実際、これまでに何人くらいの依頼者をクリニックや病院に連れて行ったのですか。

精神疾患の人からの相談はコンスタントに来ているのですが、これまでにクリニックや病院に連れて行けたのは60人くらいです。
割合で言うと、全体の2割か3割ですね。
当社に相談にこられた時点で家がゴミ屋敷になっているなど、手を差し伸べることすらできないほど酷い状態の人もいます。

一方でクリニックや病院に連れて行った後、病状が良くなった人もいます。
その中には社会復帰している人がいれば、入退院を繰り返している人もいますね。