第6章 年齢のちがいについて

ヴォルテールはきわめて美しく次のように言った。

その年齢相応の精神をもっていない人も、
その年齢特有の苦労をかかえている。

こうしたことからも、この幸福についてのもろもろの考察の末尾に、年齢のちがいがわれわれにもたら
すいろいろな変化について一瞥を投げかけるのは、適切なことであろう。

 われわれの一生をつうじ、われわれはつねに現在のことだけを考え、そのほかのことは無視してい
る。それでいて年齢のちがいをつくるものは、たんにわれわれが生涯のはじめには長い未来を目前に控
えているのに対し、生涯の終わりのころになると、長かった過去のことばかりが目にはいること、さら
にわれわれの性格はそんなことはないが、われわれの気質はいくつかのはっきりとした変化をとげ、その
ためにいつでも現在の色あいが異なったものとして現われることだけである。 ――

 わたしは、主著続編・第三一章三九四頁以降(第三版四四九頁以降)で、われわれはなぜ、子供のこ
ろは、欲求するよりもはるかに認識するという態度をとっているかということの説明を与えた。われわれの