>>73の続き

スコープドッグの頭部が、テイタニアの方を向く。テイタニアは左手の人差し指の付け根を曲げ、スコープドッグのターレットにそれを向けた。
「何のつもりだ?」キリコは、ターレットのレンズのピントをテイタニアの手先に合わせた。
「何!?」テイタニアの人差し指の付け根の関節は砲口、いや、ノズルのように見える。その瞬間、関節から液体が発射された。
ガラスマジックリンだった。それはスコープドッグのターレットの3つのレンズ全てに一瞬で吹き付けられ、テイタニアはすぐにポケットからクロスを取り出し、
スコープドッグのターレットを拭いた。ついさっきよりも視界が確実に明瞭になったのをキリコは感じ取っていた。
感心している場合じゃない。キリコはテイタニアを振り払うべく、グライディングホイールを全開にして機体を後進させた。
不意を突かれたテイタニアはバランスを崩し、スコープドッグの左肩から落ちた。
空中でバランスを立て直し着地するテイタニア。着地した瞬間目にしたのは、自らに向けて投げつけられたコロコロだった。
テイタニアはすかさず回避したが、不意を突かれたテイタニアはコロコロを避けようとするあまり、スコープドッグの存在を失念していた。
そして、それは、テイタニアの判断力を一瞬だけ鈍らせたのだ。
コロコロを回避した直後にテイタニアが目にしたのは、自身に向けて襲いかかるスコープドッグの右拳だった。
瞬間、スコープドッグの右前腕がテイタニアに向けて伸びる。テイタニアは右横に回避したものの
完全にかわすことはかなわなかった。スコープドッグの右拳が回避した際に伸ばした様になったテイタニアの左前腕を直撃し、宙に舞う。
そして、床に落ちる前に金属音が収集ピットになり響いた。薬莢だ。
スコープドッグがアームパンチ機構を使用した後に排莢されたものだった。払い下げの際に薬莢が除去されていなかったらしいのだが、
一か八かでキリコが使ったのだった。