>>70の続き

導線の矢印に従って進んで行けば格納庫の入口に向かうことは難しいことではなかった。
入口が開放された格納庫に入ると、テイタニアは周囲を見回して警戒した。
格納庫に配置されているのはAC、アーマードクリーナーだ。
百年清掃時にギルガメス、バララント両陣営で使用された主力兵器、というか非常に大掛かりな掃除用品である。
全高を4m前後に設定されたACに見合ったサイズの掃除用品を装備させることで、市街地の清掃を効率化させるために
開発された代物である。人間以上のサイズの掃除用品を装備させれば、より広範囲な清掃がが可能になるという理屈である。
ACの別名はNITOMS(二トムズ)。
New Ideal Trooper Of Multiple Souji(多種の掃除における新しく理想的な騎兵)の略称である。
ACのパイロットは二トムズ乗りとも、清掃騎兵とも呼ばれ、キリコもその一人だった。
第三次銀河大掃除以降は、各自治体の清掃工場や、民間の清掃業者に払い下げられて市街地の清掃や、
ゴミ収集用バックパックを搭載して、ゴミ収集に従事している。
ただ、二トムズ乗りはなかなか清掃業界に転職しないので、乗りこなせる従業員は少ない。
元々のNITOMSは、New Ideal Tool of Myhome Souji(マイホーム掃除における新しく理想的な道具)という略称だったのだが、
長きに渡る銀河大掃除はNITOMSにもう一つの概念を与えた。「やばい」という元々は否定的な意味の単語に
肯定的な意味が加わったのと同じようなものなのか 。いや、違うのか。やっぱりそうなのか…………。
詮無いことだ。テイタニアは気持ちを切り替えて再び周囲を警戒する。
その刹那、背後からグライディングホイールのモーター音が聞こえてきた。テイタニアが背後を振り向くと、
積み上げられたコンテナが崩れ、ロングサイズのコロコロを両手に持ったACの姿が現れた。
ACM-09-STスコープドッグ。百年清掃時、清掃の概念を大きく変えた清掃用品。そして、ACの代名詞的存在である。
パイロットは………キリコ・キュービー。