( >>33 の続き )

 一番、気になったのはここだ。豊田氏とAさんが本当に親友で、似たもの同士だとすると、きっと今も豊田氏は心の底か
ら「自分は悪くない」、「自分を怒らせた秘書が悪い」と思っていることだろう。多分、それでは誰も共感しないし、成長もしない。

 組織の中では、上司を“売る”行為は、たとえ、それが、正義の戦いであっても許されない風土がある。被害に遭った50代の
元政策秘書の男性は、これからの就職に苦労するかもしれないし、その家族も大変な心労の中にあるはずだ。だからこそ、
100人もの秘書が、当選から4年半もの間に、何も言わずに辞めていったのだろう。豊田氏はこれまで自分がどれだけ守られて
きたかを考えたことがあっただろうか?

 また、“親友”のAさんは、豊田さんの寂しさ、劣等感、不安、自分への自信の無さ、といった要素について、〈幼少期の親からの
育てられ方・自尊心の形成の所で、かなり問題があった〉と分析する。豊田氏が暴力を振るう父親のもとで、精神的にもかなり
威圧的なDV家庭に育ったことをにおわせる。

 豊田氏が秘書に行った行為は、密室の中でのDVそのものだ。もし、豊田氏は家庭の中で自分が体験したDVを、議員事務所
の中で再燃させていたのだとしても、やはりそれは、議員本人の責任であり、誰のせいでもない。

 才色兼備で努力家の豊田氏に、足りなかったものは何だろう。普通は思春期、もしくは大人になってからでも、自分の心の弱さ
がどこから来るのか、分析し克服しようとする。自分の弱さや欠点を受け入れることで、他者の弱さや欠点も理解するようになる
はずなのだが…。

 自民党広報誌によると、豊田氏の座右の銘は「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす」。人は困難や苦労を乗り越えることによって、
初めて立派な人間に成長するという意味だ。今となっては、山あり谷ありの人生も、自分にとっては、自分磨きのための材料に
過ぎない−という傲慢さにも受け取れる。もし、機会があれば、豊田氏にとっての“玉(立派な人間)”とはどのような人物か、
聞いてみたいものだ。