こあみとあやちゃん、クリスの3人で冬山登山を計画していてた。

初日はタクシーで登山口に行き、山小屋で一泊してからスノートレックする計画だった。

3人で一緒に行きたかったが、クリスは雑誌の取材があるため、ひとりで遅れて山小屋に向かうことになった。
こあみとあやちゃんは一緒になり、クリスよりも一足先に山小屋へ向かって山道を登っていた。

あやちゃんの情報によると、今日一日快晴らしい。
最初のうちは足どりも軽く、2人で話をしながら登って盛り上がっていたが、山道はしだいに雪深くなり氷結箇所もでてきたため、2人は登山靴にアイゼンを装着した。
慣れないアイゼン歩行は意外に疲れ、こあみは途中休憩のときついウトウトして眠ってしまった……。

気がつくと山小屋が見えた。どうやら小屋のすぐ近くで寝てしまったらしい。
こあみが山小屋に入って辺りを見回すと、あやちゃんが真剣な面持ちで立っていた。

「どうしたのあやちゃん?」
あやちゃんの異様な雰囲気にこあみは問いかけた。
「ねぇこあみ... 気をしっかり持って聞いてね。実はさっき警察から連絡があって、ひとりで途中まで来ていたクリスが山道から落ちて死んだらしいの。」
「そんな……」
こあみは絶句した。せっかく仕事も一緒になり仲良しになったクリスが事故で死んでしまうなんて……。

ショックを受けたこあみは、泣きながらひとりひざを抱えて塞ぎこんでいた。

そして夜、山小屋のドアが乱暴にノックされた。

「ねえ! こあみちゃん!ここを開けてちょうだい!」

クリスの声だ! こあみはドアを開けようとしたが、あやちゃんが引きとめた。
「開けちゃダメ、クリスはもう死んでいるのよ!きっと幽霊だわ。こあみを向こうの世界に連れて行こうとしているのよ。ゼッタイに開けちゃいけない!」
あやちゃんは強い口調でこあみを諭した。

しかしドアをノックする音はさらに続いた。
「ねぇこあみちゃん、いるんでしょ!?今すぐドアを開けてお願い!」
クリスの必死な声が聞こえる。クリスに会いたい、もう一度だけクリスの顔を見たい…。

「ねえこあみ、私たち『こあや』の絆は永遠だよねえ?」
振り返ると、なぜだかあやちゃんがニヤニヤと笑っている。なんでこんなたいへんな時に笑っていられるの?
「あやちゃん、なんかおかしいよ! やっぱりクリスを助けなきゃ!」
こあみはあやちゃんの制止を振り切ってドアを開けた。クリスの待っているそのドアを…。

次の瞬間、景色が変わった。

白い天井が見える。そして目を赤くはらしたクリスの顔が見えた。
「こあみちゃん... よかった本当によかった……」
クリスはそういってこあみを抱きしめた。

訳のわからないでいるこあみに、クリスは事情を語り始めた。
それによると事故に遭ったのはこあみとあやちゃんたちの方で、氷結した沢に滑落して
こあみは一晩病院のベッドで生死の境をさまよっていたという。

「あやちゃんは死んじゃったの...。頭を強く打って即死だったみたい。」
クリスは泣きながらぽつりと告げる。
こあみが先ほど見た山小屋の光景を話すと、クリスはこう言った。

「きっとあやちゃんはさびしかったんだよ。 こあみちゃんを一緒に連れて行こうとしたのかもしれないね。」



おやすみんと♪