>>873 の続き
引用ここまで-----------------------
肺線維症がガンの一歩手前とは初耳ですが、まあそれはそれとして、糖の代謝がブロックされたらサイトカインストームが発生するという主張のようです。
さっそくその元論文を読んでみました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7211589/
要するに、この論文のポイントは炎症条件下ではマクロファージはグルコースをたくさん取り込み、解糖系(主にペントースリン酸経路)を亢進させてサイトカインを作る、ということです。このときマクロファージはミトコンドリアによるエネルギー産生を抑制してしまいます。崎谷氏はこのときのミトコンドリアの抑制状態を「糖代謝のブロック」、「糖の不完全燃焼」と呼んでいるらしいのですが、これは大きな勘違いです。
彼自身が書いているように「過剰な炎症」はたしかに問題ですが、炎症条件下でマクロファージがサイトカインを作るように代謝変化することは必然ですからこれを悪い代謝スイッチである、とするのは誤りなのです。
ポイントは最初からサイトカインの産生を抑えることではなく、サイトカイン・ストームに陥らないように、どこかのタイミングで炎症収束させるためにこの解糖系の亢進が抑制されないといけない、ということです。
こちらの論文でそのあたりのことが明らかになっています。
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/…/SEIKAGAKU.2…/data/index.html
感染初期の段階では、マクロファージはTLR4という受容体を介して病原体や自分自身の損傷した細胞の情報を得ます。それによって解糖系が亢進してサイトカインを産生し、脂質代謝は抑制され、低酸素状態の組織で活動が可能な状態となります。
これがM1型と呼ばれるマクロファージです。
しかし、炎症の後期では、病原体や損傷細胞が減少します。すると、マクロファージは不飽和脂肪酸の合成を始めて解糖系は抑制されます。ミトコンドリアでのエネルギー産生も亢進します。
このときのマクロファージはM2型と呼ばれます。この不飽和脂肪酸の増加が炎症を収束に向かわせるということです。
要するに、マクロファージは通常M2型で脂質代謝をしているのですが、炎症が惹起されるとM1型となり、糖代謝を亢進させて、サイトカインを出し、炎症条件が収まると再度脂質代謝に移行して炎症を収めるという動きをする、ということですね。