「慢心しきったお坊ちゃん」(オルテガ/大衆の反逆)
第一に大衆人は、生は容易であり、あり余るほど豊かであり、
悲劇的な限界をもっていないという感じを抱いているということであり、
またそれゆえに各大衆人は、自分の中に支配と勝利の実感があることを見出すのである。

そして第二にこの支配と勝利の実感が、彼にあるがままの自分を肯定させ、
自分の道徳的、知的資産は立派で完璧であるというふうに考えさせるのである。
この自己満足の結果、彼は、外部からのいっさいの示唆に対して自己を閉ざしてしまい、
他人の言葉に耳を貸さず、自分の見解になんら疑問を抱こうとせず、
また自分以外の人の存在を考慮に入れようとはしなくなるのである。
彼の内部にある支配感情が絶えず彼を刺激して、彼に支配力を行使させる。
したがって、彼は、この世には彼と彼の同類しかいないかのように行動することとなろう。

したがって第三に、彼はあらゆることに介入し、自分の凡俗な意見を、
なんの配慮も内省も手続きも遠慮もなしに、
つまり「直接行動」の方法に従って強行しようとするであろう。