ボクが随分素早く汽車から降りたタメ雲を焦がしたくらいさ
梶井基次郎の檸檬の中に出てくるような街の中は
埃っぽい匂いが立ち込める通り雨のアトで
又鳴きだした蝉の声響く路地は駒絵と化したかのよう

遠くから聞こえる祭囃子 背筋を伸ばした 向日葵
横をすり抜ける少年の 飛び越す水溜りを跨いでから
丁度そこの角を曲がる ボクの視界に飛び込むのは
どこか大人びたキミと モコモコと ソフトクリームのような入道雲

今迄ダンマリを決め込んでた風鈴達さえ いきおい騒ぎだしたのは
ボクでさえ初めて見るキミの浴衣姿の所為だけじゃなくて
その口元スッと引かれた紅の熱に浮かされたボクが
風をこうドッと辺りに巻き起こしたからさ
神社への道はちょっとした賑わいを見せ ユラユラ燃える陽炎 蝉時雨
浴衣姿薄化粧のそのほんの一寸赤い口紅の所為で
喉はカラカラさ (嗚呼さいだあがあればこんな日は)
でも君のリクエストに答えシャクシャクと キミと一緒に食べるカキ氷

夜ともなれば二人は誘蛾灯に誘い寄せられる虫たちのご如く
祭りに向かう人並みの中 「ウスバカゲロウさキミは」
僕の呟き声に薄化粧を直したキミが振り向くとしたら
湯上りのシッカロールのにほいをほんの少しだけフワっと夜風に乗せる
又は"夏のFlora"
カランコロン鳥居潜り カンラカンラと笑い声響く境内に 尺玉花火も加わり
君の口紅 紅を増し浮かんだ ホラ鹿も舞う夏の夜空
帰り道の川原はコロコロと河鹿鳴き
口に寄せる リンゴアメ