小6の夏休み。全く泳げなかったので、担任や親にきつく言われ、学校の水泳教室に
通うことになった。暗い気持ちで水着に着替え、プールサイドに行くと、同じクラスの
かわいい女子が1人いた。その子は水泳の授業をいつも見学している子だった。
お互いに気まずい雰囲気があったが、同学年ということもありバディを組むことになった。

その子はプールに入る前から、「水が怖い」と俺にささやいてきた。プールに入っても
プールサイドから手も離すことができずに緊張していた。

最初の練習はバディ同士で水に顔を浸ける練習。プールサイドにしがみついている手を
俺の手に繋ぎ変えた。本当に水が怖いみたいで、強く握ってくる。

ゴーグルなんてない時代、目をつぶって口までしか沈めず、ちょっと泣いていた。
プールサイドから担当の先生が「顔くらい水につけられるだろう」ときつい言葉が
浴びせられる。

「絶対、手を離さないでね」とその子はいい、勇気を出して1秒だけ顔に水がつけて、
つないでいた手を離して思い切り顔を拭く。

「○○くん、できた」と再び手をつないできて、満面の笑みを浮かべた。