5年生の時だったかな。
通ってた書道塾で、ちょっとしたきっかけで、先生に呼び出されて叱られたことがあった。
こぢんまりした下町の民家の塾だけど、近所では厳しいことで有名で、小学校高学年以上まで残るのは珍しかった。
だからその塾では、5人くらいの高校生と中学生のお姉さん(男子がいなかった)の次くらいで、かなり年上の方だった。

学校でもその塾でも、ずっと大人しい優等生だったので、人前で叱られることがほとんどなかった。
教室じゅうに響く大声で厳しく怒鳴られて、まぶたが熱くなって、涙がいっぱい溜まるのがわかった。
必死で目頭から滴がこぼれるのを我慢して、唇を嚙んでたら、鼻に涙が流れ込んで、鼻水が口元に滴った。
5分足らずだったと思うけど、何とか涙をこらえて、解放されて自分の席に戻ったら、年下の生徒がちらちら自分の顔を見て、時々目が合った。
視界は涙でずっとにじんでて、いよいよ涙をこぼして泣き出す瞬間に注目されてるのがわかる。
恥ずかしくて耳まで熱くなったが、ううっ、と泣き声は漏れそうになるのをこらえて、トイレへ行った。
もちろん入った途端に、ぼろぼろっ、と次々に涙がこぼれて、5分くらいしゃくり上げて泣いた。
大泣きしてトイレから出なかったらますます恥ずかしいから、何とか泣き止んで、手で涙の跡をぬぐったが、鏡に映った顔はまぶたも鼻も真っ赤。
泣き腫らした顔を、少なくとも30分以上、年下の子たちに間近で注目されることになった。
夜からの指導に遅れてやってきたお姉さんたちにも「どうしたの」という感じの視線を浴びて、また涙が湧きそうになった。
塾を出るまで、ずっと涙を溜めたまま、一目で泣いた後とわかる顔をしてたんだと思う。