6年生の時に、年下女子に泣き顔見られた経験がもう1回あった。
親戚の家族とドライブに行った時、20歳代の美人のお嫁さんに、よちよち歩きの娘がいた。
ドライブインでその子を遊ばせてた時、理由は忘れたが、父親に呼びつけられて叱られた。
いったんその子をお嫁さんの許に行かせて、建物の陰の人目につかない所で説教された。
人通りはあって声は聞こえるので、口答えできずに言われっぱなしで悔しくて、すぐに目頭と頬が熱くなった。
涙をためたまま懸命にこらえて、鼻を軽くすすって、泣き声を何とか飲み込んで、5分くらいで解放。
明るい屋外のベンチにいるその子を迎えに戻ったら、お嫁さんとお婿さんに軽い調子で「怒られたの」と訊かれた。
一目で泣き顔とわかったのが恥ずかしくて、どっと涙が出てきて、大粒の滴が立て続けに頬にこぼれた。
必死で泣き声が漏れるのをこらえて、黙って唇を噛んでたら、お嫁さんが「そういうことあるよね」とやさしく声をかけてくれた。
とうとうこらえきれなくなって「うーっ、うぇっ、うえっ」と数回しゃくり上げ。
顔を拭うとますます大泣きしそうだったので、涙を頬に伝わらせたままうつむいてたら、その子が見上げてきて、
「お兄ちゃんが泣いてる、ねえ、どうしたの」とお嫁さんに聞いた。
こんな小さい子に、6年生のお兄さんが泣いてるのを見られたと思ったら、悔しくて恥ずかしくて涙止まらず。
結局、その後15分位、秋晴れの明るい空の下でその子を連れて、泣き顔のままドライブインを歩き回る羽目になった。
ちょっと泣いただけでも、すぐにまぶたも鼻もひどく腫れる方で、目頭が痛いくらいに熱かった。
しばらくは時々「うっ」としゃくり上げが漏れて、新しい涙が伝うのを、うつむいて隠して歩いた。
頬全体が濡れて冷たくて、泣いた跡が一目瞭然の顔してるとわかるから、すれ違う赤の他人の子供に皆注目されてるような気がした。

小学校2年生くらいまでの記憶は曖昧だけど、とにかく家では叱られるとすぐ泣いてた。
しかも、毎回「うぇーん」「わぁーっ」と大声上げて号泣して、解放されても「うぇっ、うぇっ」と長いこと悔し泣き。
うちの母親が、叱る時「うちの子じゃありません」と玄関の外へ出すことはしなかったのは幸いだった。
それでも、泣いた後、まぶたがひどく熱い時に、夏の日差しをいつになくまぶしく感じたり、外で飼ってた犬に顔舐められた記憶が数回ある。
多分小さい頃は何度か泣きじゃくってる最中の顔を、高学年でも、案外窓越しに泣き腫らした顔を見られてたのかも知れない。