そっから少しして、女が突然絵を描くのを止めた
何だろうかと見てみたら、なんか遠い目をしてんの
で、目の前に広がる川を見ながら、なんか言ってきた

『……アンタさ、こうして絵を描いてて恥ずかしくない?』
『うーん……どうだろうな。最初は恥ずかしかったけどな。まあ、慣れれば大したことじゃないぞ』
『――うん、だからアタシも一緒に描いてる』
『は?』
『アタシに見られても、何も気にせず絵を描くアンタって、凄く変な奴』
(お前……)
『でも、それってアタシにとって羨ましいんだよね。誰にも気にすることなく自分のやりたいことやれるって、なんかすごいと思う……』
『………』
なんか、想像よりもまともな話をしてきて、豆鉄砲くらった気分になってた
で、女はちょっと黙って、まだ話してきた

『……それと……』
『それと?』
『……絵、褒めてくれたし……』

そう言うと、女はすぐに絵を描く作業に戻った
なんか、いつもに増してスケッチブックと顔が近い
それ見てると、俺なんか笑えてしまって、ニヤニヤしてた
そしたら、女は不機嫌そうにぼやいてた
『……ニヤニヤすんなよ。気持ち悪い……』
『悪かったな。俺は元々こういう顔だ』

そっから、俺達はいつも通り絵を描いてた