子供の頃一度だけ、俺のはとことかいう兄弟と会ったんだ。
そしてものすごく巨大な団地に行った。
高いコンクリートの壁の谷間で、俺たちは大はしゃぎで遊んだ。
なぜだか俺たち以外の人間がいた記憶がない。まるでその団地は、俺たちだけのために用意された遊び場みたいだった。
階段を駆け上がったり、下水道に潜ったり……あっという間に日は暮れた。
一晩だけおばあちゃんちに泊まって、次の日には俺たちは別れた。以来二度と会ってない。
あの日、行った場所がどこだったのか、俺は随分経ってから親に訊いてみた。
でももちろん覚えてはいなかった。ばあちゃんちの周囲は一面田んぼが広がっていて、
あんな団地があるような場所じゃない。子供だけでそんな遠くまで行けるはずが無かったのに……。
今でもあの無人のコンクリート群に俺たちの声だけが響いていたのを覚えてる。


たった一度しか行かなかったのに、妙に心に残ってる……そんな場所。

そこがどこだったか思い出せなくてもOKです。
そこで会った人とか、経験したこと。風景のこと。
そんなことを語りましょう。