家が旅館やってたから母さんはバリバリの女将だった。いい着物を着て旅館の仕事まわしてた。
でも父親はろくでもないから外に女つくったあげく、離婚・商売たたむことになった。
生活は一変。母、姉、私、母方の祖母でアパート暮らし。私だけ親戚の家に居候したこともあった。
でも、私立高校も転校することなく大学まで行かせてくれた。慣れない会社勤めしてさ。
数年後には母ひとりで新居まで建てちゃった。70歳までローン地獄。それでもカラカラ笑ってた。

そんな母がしみじみ私に謝ったことがある。新居への引越しのとき。
二人で荷物を運んでたら、急に母が「私が離婚さえしなかったら、アパート暮らしもしなくてすんだし…。
慌ただしい引越し何度もしなくてよかったのにね。ごめんね。」って。私は呆気にとられてしまった。
離婚の直後も、母は「あんたたち子供のことは何があっても一生守るから」ってそれだけを毅然と言い放っていたから、
母が建てた新居への引越しの日にまさか謝られるとは思ってなくて、びっくりした。
「あのまま親父と離婚してなかったら、こんなピカピカの家に住めないよ!だから私、今のほうが幸せ」
って冗談めかして言ったら、「そやなぁ。あんた、ええこと言うなぁ」って母が笑ったから安心した。
この時ほど神妙な顔の母を見たことがない。今でも脳裏に焼き付いてる。

最近、母がローン組んで家建てた理由が分かった。
「娘二人をちゃんと『私たちの家』から嫁に出したかった」
「二人がいつ帰ってきてもずっと変わらず居場所があるようにしたかった」

冗談じゃなく、母さんといる今が幸せ。1番幸せ。
まだまだ嫁になんか行ってやんないw

長文失礼しました。