痴呆の末に亡くなった母の遺品を整理していた。
幼い頃見覚えのある着物、編物の道具。
そういえば着せ替え人形の洋服を編んでくれたりしたっけ。
よくあんな小さな洋服を・・・。
そして古ぼけた大学ノートが数冊。
若い頃の母の日記だった。読み進むうちハッとした。
母は若い頃に子宮の病気をしていたのだった。

「神様。お願いします。子宮を取らないで下さい。
わたしは子どもを産んでみたいのです。自分の子供にお乳を飲ませて抱いてみたいのです。
だから、どうか神様、赤ちゃんを産ませてください」

そして数年後身ごもった子供がわたしだったのか・・・。

亡くなる少し前には、何かを食べさせてもボロボロとこぼす母に苛立ち
母のオムツを替えるのだって内心めんどうに思っていた自分。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。
こんなにも大切に産み育ててくれたのに私は・・・。

古ぼけた写真の中の母は微笑んでいる。
「いいのよ」って言ってくれているんだろうか。
もう一度会いたい。