オレの父親はグータラでロクな稼ぎがなかった。
そんな訳で、家は貧乏だった。
弁当にもっていったおにぎりの具も魚の骨だけ。なんて時もあった。

三人兄弟で年の離れた末っ子だったオレは兄と姉のお古ばかり着ていて、兄貴が使い古したラジカセを貰い、
何一つ欲しい物なんて買ってもらえなかった。
兄貴達も、よくオヤジに殴られたり正座させられてたりしていた。
そんなオヤジに母親はなんの文句も言う事もなく、寿司屋とかでせっせとバイトしてた。
オレはそんな家庭環境に生まれてきた事を小さい頃からホントに憎んでた。
なんでこんな父親なんだろう
母親はなんで働くんだろう
なんでうちは貧乏なんだろうと。

そして去年、27才になったオレは家を出て婿になって結婚した。
相手は3コ下の裕福な家庭で育った女性。
妻を親に紹介する時、婿に行くと言っても
「あんたの自由だよ」
と母に言われた。
その時は「当然だ」と思い何も考えもしてなかった。

そして結婚式前日、親から「最後くらいはみんなで食事しよう」と言われた。
それもそうかな?と思ったオレはアパートから実家に向かって出ようとした時、郵便受に手紙が入ってたのに気付いた。
それは母親からの手紙だった。
小さい頃のたわいもない出来事とか病弱だったオレを看病した思いなんてのを汚い字で書いてあった。
そして最後に、
「あなたのこれからの人生の幸せを願っております。27年間ありがとう。」

今までこんな事を書いたり口にしたりする人じゃなかった。
一生懸命働いて育ててくれた事を考えたらものすごく涙が出て来た。

いろんな思い出と共に、27年間お世話になりました。