かつて僕が大阪大学基礎工学部の学部学生であった時、大学院の指導教官となってくれそうな先生を
探して各地のいろんな先生方を訪ねて回った時の事である。理論物理学を大学院で専攻しようとして理
論物理学の初歩をかじっていた僕は、当時京都大学数理解析研究所に居られた超一流の理論物理学者で
おられる中西先生にこんな質問をした事がある。

 僕 : 「理論物理学では円周率が様々な所に出てきますが、それには何か深い物理的な理由があるの
でしょうか?」

中西先生: 「そういう事を何時も頭の片隅に置いておくのはとても大切な事です。でもそんな事ばかり
考えていたら研究論文が書けなくなります。研究者とはそんな甘いものではありません。」

 僕 : 「は−そうなんですか−」

結局僕は京都大学の中西先生ではなく、別の先生に大学院の指導教官になって頂き、理論物理学ではな
く純粋数学を専攻した。しかしこの時の中西先生のお言葉は今でも何となく「気になって」いる