>>163 「コラム 状態関数とエントロピー
「状態関数とは、P,V,Tなどの条件が決まれば、その値が自動的に決まる
経路によらない関数である。」
「熱力学の第二法則は、エントロピー増大の法則とも呼ばれ、
自然の変化においてはエントロピーが増大するというものである。」
 ところで、状態関数の定義は《dSの(一周の)周回積分=0》であった。よって
《dSのA→Bまでの積分と、B→Aまでの積分の和=0》となり、A→B→Aの変化の過程で、
エントロピーは増大しない。これは、熱力学の第二法則に反しているようにも見えるが、
どうであろうか。」
【実は、これにはトリックがある。】
「あくまでも、【可逆過程】においては
    ΔS=∫dS=∫d'Qrev/T=0
が成立すると言っているのである。」
「つまり、【不可逆過程】のことは考えていない。」
 よって、エントロピーが状態関数とみなせるのは、【可逆過程】に対してのみである。
つまり、熱を加えても外に仕事をせず、すべて内部エネルギーとして蓄えられるような場合には、
エントロピーは状態関数として扱ってよいのである。」

                 村上雅人2017「なるほど統計力学」(p.54)より、一部抜粋。