初代ウルトラマンの時はまだ怪獣が主役だった
というのも「ウルトラマン」という存在は初代ウルトラマンで初めて提示された概念であって、それ以前には、

「怪獣を倒す(非怪獣の)スーパーヒーロー」

というものは(少なくとも円谷の系譜においては)存在しなかったからだ

怪獣はゴジラから始まってウルトラQまでそのブランドを時間をかけてしっかりと熟成してきた
初代ウルトラマンが登場した時には「怪獣」というのは大衆にその存在を認知されて確固たる地位を築いていたのだ
初代ウルトラマンはそれを利用していわば「アンチ怪獣」として怪獣を凌駕する唯一無二の存在として提示された

しかしシリーズが進むに連れてウルトラマンの方が不動の地位を築いてしまい、怪獣はその相手役として主役の座から引きずり降ろされた
その存在が矮小化されてしまったのだ

ウルトラマンの初期企画案ではウルトラマンに該当する存在は「謎の怪獣」
だった
それを怪獣ではなくヒーローにすべきと主張したのはTBS側だが、円谷サイドはそれに最後まで抵抗していた形跡がある

これはそうなることでここまで円谷英二が築いてきた怪獣の地位が一気に陳腐化する事が分かりきっていたからなのだ
ウルトラマンにおいて怪獣が主役であり、今なおその存在感を示しているのは怪獣にまだそのブランドイメージと神通力とが充分にあったからだ

円谷プロにとっての生命線である怪獣という資産を安売りするわけにはいかない
そういう思惑はあったのだと思う
しかし結局TBSに押し切られる形でウルトラマンはスタートしてしまった

こうなれば怪獣よりウルトラマンに注目が集まるのは当然だ
ウルトラマンは一気にブランドを築き上げ、その眩い光で怪獣のブランドイメージはくすんでしまった
後のシリーズでは自ずと主役はウルトラマンになり、怪獣はその相手役としての方便でしかなくなった
方便でしかないのだから、そこでいくらバードンが強いヒッポリト星人が強いといってそれを作品内で描写したところで、そこに説得力がないのは当然のことなのだ

ゼットンに未だに最強怪獣としてのイメージが強いのは、怪獣という存在にまだ説得力があったど真ん中の時代に、怪獣を凌駕するウルトラマンという存在を倒してそれを上回るイメージを見ている者に強烈に植えつけたからなのだ

最終回でゼットンがウルトラマンを倒したのは、ウルトラマンの世界を一旦リセットして、また怪獣を主役に戻したいという思いが円谷プロにあったからなのではなかろうか
セブンで敵が宇宙人になったのも、怪獣についてはまだ価値を落とさずに温存して置いておきたいという色気が円谷プロにあったからではないのか

しかしウルトラマンによって一旦進み出した針は不可逆だった
時間が巻き戻ることはなかったのだ