>>276
ドクターケイトらとの最初の戦闘の後、逃げる戦闘員を追って、坂を駆け上がる
電波人間タックル。それまで猛毒に侵され、ガスを喰らい、杖で叩きのめされて
も、健気に戦い続けてきたタックル。

超絶な高熱と凄惨な劇痛が、およそ耐え難いほどに憎悪して、非情にも、もう軽快
することはない。加えて、回転性の眩暈、極度の痺れも物凄く、足許が覚束ない。
「ぁ…… ぁぁぁ…… ……っ ああっ ぁ……」
儚げに身悶え、堪えかねて左膝から崩れ、力無く両手をついたかと思うと、仰向け
に倒れて坂を転がり落ち、情けなくも弱弱しい姿を晒してしまう。赤いスーツと
剥き出しの脚が、乾土に塗れる。うつ伏せに倒れ込んだタックルの華奢な背を、
みっしりとこびり付いた乾土が、これまでに無く汚している。

「か、身体が言うことをきかない……」
形振り構わず生脚を投げ出して、無様に蜿き、地を転がり、のたうち回る。右肱
をつき、左手で支えて、気丈に起き上がろうと藻掻くタックル。重く揺れる腰の
唆る動き。しかし、蹌踉めいて、無様に突っ伏してしまう。