2 ガス

「小生意気ナ娘…」

「えいっ、あっ…」

「ホーラ、ケイトガス!」

「あっ! うっ、あっ、か、身体が痺れる」
「あっ、あっあっ、あっ! あっ!」

錆色の神経ガスを浴び、緩慢な動作のなか、憚らず、しどけない喘ぎ声をあげてしまう。

「フッ、フッ、フッ」

「はぁ、はぁ…」
「ううっ… 目が、あああぁ…」

蹌踉めき、蹲りそうになるところを、黒いマントが襲う。
もたつきながらも、やっとの思いで躱す。
全身の粟立ちを怺え、ミニスカートを翻し、何とかケイトの右半身に縋り付こうとするが、
力任せに振りほどかれ、哀しくも空しく、跳ね飛ばされてしまう。

「小癪ナ」

変幻に繰り出される邪な杖で、鳩尾を突かれて息が詰まり、受身もとれずに、
堅く乾いた地面で強かに丸やかな美尻を打つ。

「うっ…」

非情にも、猛毒とガスに全身が冒され、超絶な高熱と凄惨な劇痛が、
およそ耐え難いほどに憎悪しているのである。
加えて、回転性の眩暈、極度の痺れも物凄く、立ち上がる足許も覚束ない。

(か、身体が言うことをきかない)

儚げに身悶え、敢え無く崩れ落ちる様も、凄絶な程に美しく、
坂を転がり、赤いスーツと剥き出しの脚が、土に塗れて汚される。

「は…」

右肱をつき、左手で支えて、唆る腰を重く振りながら、気丈に起き上がろうとするも、
素早く追いつかれ、残酷に蹴り上げられる。

「あっ」

俯せに倒れ込んでしまい、黄色いブーツを踏み躙られて、細く締まった両足首を踏みしだかれる。
そのまま背を打ち据えられても、ただただ荒い息を怺えて、喘ぐことしかできない。

(口惜しい…)