実際のところ、ライトの数が増えるほどリアル感は減ります。
『ラドン』が良く見えるのは当時のフィルムの性能が悪かった事の賜物ですね。
太陽光に似せるんだったら、理想を言えばライトは太陽と同じ数の方がよろしい。

スタジオの(特撮に限らず)広いセットに太陽光を再現する場合、
何で沢山ライトを使うかというと、主に太陽の特性である「平行光線」を再現するため。
太陽というのは遠くにあるので、例えば東京と横浜で太陽の角度が違うって事はまずない。
でもスタジオのライトは被写体の近くにあるので、
ライトが一発だとライトを中心に末広がりの影が出来てしまう。光線の角度が揃わないのね。
『タイタニック』で舳先に立つレオ様からグッと回り込んでタイタニック全景まで見せるカット、
あれはライト一発で太陽光を作り出しているんだけど、よく見ると舳先と船尾で全然影の角度が違う。
あの大きさのミニチュアでもこれだけ変わってしまう訳なんで
五十六機が突っ込んでいくミニチュアセットとかの場合、平行光を作り出そうとしたら
同じ角度を向いたライトをセットの広さだけ並べないとならない。
光量が必要な特撮の場合、並べるライトの密度は余計に増えます。

さて、実際の光というのはCGのライトと違って「ここからここまで当てたい」と指定できない。
って事はライトを並べると光が重なって当たってしまう部分が出来るわけで
この部分だけは当たっているライトの数だけ影が出来てしまう。
実際にはその重なりを減らすために、様々な努力が為されている訳だけど限度はある。
『ラドン』の時代は今よりもライトの数が多かったわけだけど
影の部分がグッと落ちてしまうので、影の重なりが気にならなかった訳ね。

理想を言えば、今(最大でおよそ20kwくらい)よりも大光量のライトが開発されて
天井が高いスタジオが使えればリアル感は増すんではないかと。
もちろん、フィルムの感度も上がって欲しい。