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【姉御】篠原美也子のANN【110番】

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0001たったひとつの朝を待つ幾つもの夜
垢版 |
04/01/04 05:43ID:spZZodo/
93年秋から2年間、水曜2部で放送されていたこの番組。
「モテない、金無い、受からない」のキャッチコピーで、男子浪人生などに人気を博しました。

主なコーナーとして、リスナーからの投稿によって小説を完成させる“篠原美也子文庫”、
篠原美也子作成の珍妙なグッズをプレゼントする“ミヤコロンドン”などがありました。

篠原美也子オフィシャルサイト room493
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/3094/
http://www.room493.com/

現在放送中、篠原美也子のありえない日々(WEBラジオも聴けます)
http://www.tbc-sendai.co.jp/fr_02radio.html

邦楽板の本スレ。
【二年目母さん】篠原美也子with龍part5【大奮闘】
http://music2.2ch.net/test/read.cgi/musicj/1067214023/
0093篠原美也子文庫
垢版 |
04/06/23 01:01ID:m4qpWeNw
真夜中のSF小説  『奇妙な一日』 −1− 

カップから立ち上るコーヒーの湯気で鼻の毛穴が開くような気がした。
どこか開放感に似たその感覚に一瞬目を閉じると、
柳沢公平はおもむろに黒い液体の一口飲んだ。
濃い、苦い、おまけに熱すぎる。
15年に何々とする結婚生活だが、朝のコーヒーをめぐっての戦いは、
新婚わずか七日目にして妻の富子に軍配が上がっていた。
寝込むのである。
拗ねて仮病を使うというのではない。
本当に熱が出て具合が悪くなるのである。
元来、猫舌でカフェインが得意でない柳沢であったが、
六日目についに根をあげた。
「飲む、飲みます」
こうして、新婚七日目から今日に至るまで、
朝のコーヒーは柳沢にとって一種の儀式になった。
コーヒー如きで寝込まれてはかなわない。
それ以外はいたって普通の妻である。
唯一の自慢がコーヒーなのだから目を瞑るべきだ。
「おはよう」
中二の一人息子、洋平が食卓についた。
「おはよう」
柳沢はもう一口コーヒーを啜った。
いつも通りの朝だった。
0094篠原美也子文庫
垢版 |
04/06/24 01:28ID:bgwXdeTv
真夜中のSF小説  『奇妙な一日』 −2−

軽い食べ物が食卓に並び順調に朝食が進む中、今日が燃えるゴミの日であることを、
柳沢は妻に指摘されて始めて知った。
ゴミ出し当番を勤めているのは柳沢自身に他ならない。
最近になってそういう伝統が形作られたのである
妻が言うに、世間体を気にしてゴミ出しをやらせないという考え方はもう過去のものであるらしい。
その結果として、柳沢にはゴミ出しという重要な任務が課せられることとなったのだ。
情けない。
つい柳沢は愚痴をこぼしてはみるものの、あの儀式と同様、結局は従わざるを得なかった。
「ごちそうさま、行ってくる」
急ぐようにして食事を済ませた洋平は備えていた荷物類を手際よく持つと、足早に食卓から離脱した。
陸上部の朝というのはそれなりに早いようだ。
柳沢もそれに促されるようなかたちで、朝食を終えると家を出た。
「行ってらっしゃい」
今でも妻が玄関先まで出てきて見送ってくれる。
紛れもなくいつも通りの朝だった。
0095篠原美也子文庫
垢版 |
04/06/27 01:53ID:kYRv9rDD
真夜中のSF小説  『奇妙な一日』 −3−

柳沢は少し早歩きで駅に向かった。
柳沢にとって、いつもと違う時間の電車に乗ることはとても嫌だった。
柳沢は駅に着くとホームを見回した。
喋ったことのない見覚えのある顔がいつもと同じくいた。
こうして電車を待っていると、必ず部下の前田が声をかけてくる。
「おはよう」
やっぱり声をかけてきた。
柳沢は「おはよう」いつもと同じく答えた。
二人は満員電車に、車掌に押されながら何とか入れた。
柳沢はいつもと同じ電車にのれたことにひとまず安心した。
だが、そのとき、柳沢は何かいつもと違う、いや、違っていることに気がついた。
何が違ったかしばらく解らず、二駅が過ぎたとき、ハッとした。
確か前田は自分の部下だ。
それなのに前田はホームで「おはようございます」ではなく、「おはよう」と言った。
まるで、友達や恋人にでも言うように。
柳沢は、ただの言い間違いだと思おうとした瞬間、隣にいた前田が耳元で言った。
「今日も綺麗だよ」
0096篠原美也子文庫
垢版 |
04/06/29 01:53ID:kjnkEcfq
真夜中のSF小説  『奇妙な一日』 −4−

柳沢はこれをたちの悪い冗談だと思うことにした。
しかし、上司に下らぬ冗談を言う前田に注意をしなければ、柳沢の気が済まなかった。
勤める上村工業に着くと、柳沢はいつもの係長の席に着き、午前中は書類を片付けていた。
昼、柳沢は朝の注意をしようと前田を喫茶店に呼び出した。
「朝の冗談は何かね?」柳沢は少し声を荒げてみせた。
「会社ではいわないようにしていたけど、君の顔を見たらたまらなくなったんだ」
前田の目は紛れもなく恋人を見るものだった。
柳沢は恐ろしくなり会社へ逃げ帰った。
柳沢が席に着くと、上司の奥山部長が声をかけてきた。
「柳沢君」
柳沢の耳元に近づいて言葉を続けた。
「綺麗だね。愛しているよ」
柳沢は身動きが出来ずにいると、ひとりのOLが呼びにきた。
「柳沢係長、上村社長がお呼びです」
柳沢が社長室に入ると、後ろから抱きつくものがいた。
「公平ちゃん可愛い」
上村社長だった。
0097篠原美也子文庫
垢版 |
04/07/02 01:14ID:lnh1k5f5
真夜中のSF小説  『奇妙な一日』 −5−

柳沢はとっさに社長から逃れ、社長室を飛び出した。
部下の前田といい、奥村部長といい、よりによって社長まで。
柳沢は何がなんだか解らず頭を抱えた。
仕事を終え、帰宅途中、柳沢は妙な視線を感じながら一つのアメリカンジョークを思い出した。
ある男が数人の美女と一緒で全員が全裸という夢を見て、困惑して医者に相談したところ、
医者は何が不都合なのか?と聞き返した。
すると、その男は言った。「私も女だということです」というものだ。
柳沢は家に着くと自分の姿を鏡で確認した。
そんなことがあってたまるか。
と思いつつも、柳沢は鏡の中のいつもの姿に内心ほっとした。
いつも通り、家族三人で食卓を囲んでいると、息子の洋平が言った。
「ねぇ、お母さん。僕とお父さん、どっちが綺麗」
「そうねぇ、洋平の方が可愛いし綺麗よ」と妻の富子が答えた。
柳沢は頬を硬直させ立ち上がって叫んだ。
「もっと綺麗になってみせるわ」
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