1974年12月公開の「宵待草」は、その前年8月に起こりストックホルム症候群の語源となった
銀行強盗事件と、1974年2月にサンフランシスコで起こったパトリシア・ハーストの事件が
モチーフのようで、高橋洋子が演じた北条寺しのには特にハーストが投影されていると思う。
赤化した華族令嬢としては1933年に満20歳で自殺した岩倉靖子(岩倉具視のひ孫)が
知られるけど、岩倉の活動はオルグにとどまったので、モデルとまでは言えないだろう。
大正時代を舞台とした神代辰巳監督の作品としては、この前年の「四畳半襖の裏張り」、
9年後の「もどり川」のほうが作品的には上だと思うけど、高橋洋子のかわいらしさ、小悪魔、
そして悪女といったさまざまな演技が見られて、ファンにはたまらない映画だろう。