お増「マアあの二人を山の畑へ遣るッて、親というものよッぽどお目出たいものだ」
母「政夫も支度しろ。民やもさっさと支度して早く行け。
二人でゆけば一日には楽な仕事だけれど、道が遠いのだから、早く行かないと帰りが夜になる。
なるたけ日の暮れない内に帰ってくる様によ。お増は二人の弁当を拵こしらえてやってくれ。
お菜はこれこれの物で……」
母「民やは町場者まちばものだから、股引佩くのは極りが悪いかい。
私はまたお前が柔かい手足へ、茨いばらや薄すすきで傷をつけるが可哀相だから、そう云ったんだが、
いやだと云うならお前のすきにするがよいさ」