─ 標準語で書け!ここでは方言使うな!わかったか!?─
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犯人役の女優や、脇役俳優の良さ云々はさておき、正当派「ストーリー展開」が色濃く、
ほとんどのシーンで無駄が無く(注)、密度の濃い作品となっています。ハリー警部歩の
「落としのテクニック」も、期待通り炸裂してくれています。トリッシュ・バン・ディーバー
もう一つの側面「犯人役ゲストスター」の影響力は、他の傑作と比較し線は細めです。
犯人のケイは美しく描かれていますが、突出した存在であったとは感じません。それ以上に
テレビ業界という厳しい環境において、人間が壊れてゆく様を見せてくれたと思います。
出世欲の強い女性の立場その反面、心理の描写には鋭いものを感じます。殺意、焦り、意思の
強靭さなど、通常の女性では表現しづらい心の揺れを、見事に表現しています。出世欲の
強い女性が、組織のトップにのし上がる過程で、仕事を愛する気持ちよりも、成功したい
願望が心を支配している様子がうかがえます。周囲の男性たちは、それを好ましく
思っていませんでしたね。
それと対比し、同性愛を連想させる描写もありました。女優バレリーとの関係がそれです。
初期のコロンボでは扱われなかった題材でしょう。ディレクターの男性が女性的なども、
類似した観点です。終わったら、ほっとすると言うが…
犯行を認める場面で、終わったらほっとすると言うが…その逆だ。と心境を語るケイ。
まだ負けたわけじゃない、きっと這い上がってみせる…という意欲をみせました、女は強い。
本作品「殺人」では映写時に、フィルムのリールを切り替えるタイミングを画面右隅に表示
されるパンチによって、見極める‥というテクニックが焦点となっていて、邦題「殺人」に
結びつけています。それに対し、21話「意識の下」で映写技師のロジャー・ホワイトは、
小銭をリール中心に挟み込んで、それが落ちたら交換のタイミングだと語っています。
テレビ局の映写機は最新設備で、小銭を挟めない(カバーで覆われている)タイプでしたね。
特に印象的なシーン「エレベータの中で…」
エレベータの天井に見えた「凶器の拳銃」を、犯人ケイが何とかしてそれを下に落とそう
とするシーンは、秒読みの殺人で最も印象に残る場面です。身長が低い彼女が必死になって
いる様子がスリル満点に描かれています。しかも、その行為そのものが警部が仕掛けた罠
だと気付かされ、完敗を認めるのも素晴らしかったです。
パトリック・オニール
テレビ局のお偉方の役で、パトリック・オニールが登場。彼は名作と呼ばれる9話「パイルD-3の壁」
で犯人のエリオット・マーカムを演じています。今回もさすがの演技でした。テレビを
修理するクレイマー刑事なぜかテレビを修理する人の役で、すっかり顔なじみのはずの
「ブルース・カーヴィ」が登場。う、どう考えても不自然な起用だと思えますが、これは
ブルース・カーヴィが「ジョン・フィネガン」同様、特別な俳優扱いだったことを伺い知れます。
撮影所(ロケ地)のモニター室で
犬に追い回され、ヒステリックに
叫んでしまいます。メリーゴーラウンドの音楽と目まぐるしく切り替わる画面が印象的
ですが、録画して何度も見られる時代となっては、このような強烈なシーンより、静かな
場面の方がありがたいですね。同じような意味で「黄金のバックル」の、ジェニーが死体を
発見して叫びそうになるシーンも、早送りしたくなります。(笑注)テレビ局のモニター室
でコロンボ警部が、画面に模様(パターンのようなもの)を写して喜んでいるシーンは、
不要でしょうかね〜。冒頭で「鼻歌を歌いながら自動車事故を起こすシーン」は、
無駄と言い難い
楽しいシーンでした。 
監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ロバート・ブリーズ
ケイ・フリーストン:トリッシュ・ヴァン・ディヴァー
フラナガン:パトリック・オニール
マーク:ローレンス・ラッキンビル
ウォルター:ジェームズ・マクイーチン