0831この子の名無しのお祝いに
2018/10/17(水) 19:49:32.29ID:jxA+48t7https://www.asagei.com/excerpt/100022
先にも書いたが、小百合の女優としてのピークは20歳前後だと、私は思っている。「純愛コンビ」が強制解消になるまで‥‥。
事実、その後の小百合は伸び悩んだ。男なら誰もがときめく綺麗な女性なのに、女優としての魅力は薄れていく。そうして彼女は、長いスランプに陥っていった。
そんな折のことだった。輝きを失いつつあるスターを見ていられなくなった三人の「サユリスト」が立ち上がったのだ。
中山千夏の小説「クワルテット」に、こんなシーンが描かれている。
登場するのは一人の女優と三人の男。女優は非の打ち所のない美少女で、スクリーンを駆け巡っていたのが、年齢とともにだんだん下降線をたどっていく。
小説といっても、これはいわゆる「モデル小説」であり、この女優は小百合そのもの。だから設定が全く同じなのだ。
そして三人の男はそれぞれの方法で、女優を脱皮、再生させるための講義、レクチャーをすることになった。
いわゆる「個人授業」だ。男たちは互いに「抜け駆けはなしですよ」という約束事を交わすものの、もちろん、虎視眈々と「あわよくば」を狙っている。
この男たちもまた、作家、写真家、プロデューサーと、実在の人物と設定が同じ。
小百合と対談したこともある、さる大御所作家に、高名な写真家。そして名物編集プロデューサー。もちろん、小百合とは交流のある人物だ。
「大御所作家」は定宿のホテルの部屋に「小百合」を呼んで、バスローブ姿で待ち構えていた。「小百合」の付き人を帰らせて。そして密室の「マル秘個人授業」がスタートする──。
あとになって私は、小百合にインタビュー取材をする機会を得た際に、改めて確認してみることにした。
「あれは小百合ちゃんのことですか」
すると彼女は突然、キッと怖い顔になって、こう言った。
「それは千夏ちゃん、ご自分のことをお書きになったんじゃないかしら!」
そんなはずはないのだ。小百合はごまかしていると、すぐ感じた。
結局、「個人授業」は奏功しなかったのか、小百合はスランプを脱したとはいえなかった。