過労とストレスで声が出なくなったときに結婚

年間16本も主演映画に出て、睡眠時間3〜4時間でも、大学に入るための勉強を欠かさなかった頑張り屋の彼女だったが、
私生活と超多忙な生活がたたって20歳を過ぎてから、ストレスで声が出なくなってしまう。

ここで、私が観た多くの彼女の映画の中で、忘れられない一本の作品について書いてみたい。

軟骨肉腫のために若い命を失ってしまう大島みち子と大学生・河野實とのはかなく悲しい恋を描いた『愛と死を見つめて』である。
小百合19歳。東京オリンピック開催の日に封切られ、大ヒットとなった。

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私は東京・中野の映画館で5回見た。最後は、当時出たばかりの小型の録音機を映画館に持ち込み、隠し録りをして、100回以上は聞いたと思う。

というのも、私は高校3年生で、これから受験勉強という二学期の始めに担任から結核だと告げられ(小学校入学時にも一度かかっている)、受験どころか、家から出られない境遇になってしまったからだ。

家をこっそり抜け出しては映画館の暗闇の中で、みち子の身の上と自分を重ね合わせ、声をかみ殺して泣いた。

その前に、大空眞弓・山本学でやったテレビドラマのほうが出来はよかったのかもしれないが、私の青春時代のほろ苦い思いが染みついた映画である。

過労とストレスで声が出なくなった小百合だったが、女優としても、女の子から大人の女性へと「脱皮」することができず、映画会社から声がかからなくなる。

そんな不遇の彼女を慰めてくれたのが、15歳年上でバツイチのテレビ・ディレクターだった。