【私が愛した裕次郎】 八名信夫

 石原プロモーションが制作した「西部警察」 ド派手な爆破シーンの連発で
悪役も壮絶な最期を演じ続けた。
 
「カースタントで爆弾を何十個もよけながら蛇行運転するシーンがありましてね。
車の下で爆発すると車が浮き上がりますから、いくら悪役でもこれは怖い(笑)
最後に車が横転してその中から私が顔にスミを塗ってはい出てきて、無惨に
残酷に死んでこそ主役が引き立つ。それが悪役の誇りです。ある冬、多摩川土手で
ロケがあって寒くて仕方ないとき、裕次郎さんが『八名さん、この弁当まだ温かいよ』
と自分のものと交換してくれた。感激しました。射殺シーンでは、背広に弾着(血糊が
吹き飛ぶ装置)をつけるんですが、火薬で火傷することがある。裕次郎さんは撮り終える
たびに、すぐに走ってきて『大丈夫ですか?』と声をかけてくれた。
昔の大スターというのはふんぞり返っていたけど裕次郎さんは違った。よし、この人の
ために死んでやろう、という気持ちになるわけですよ。『西部警察』では何度も殺され
ましたが、ゲスト主役もやらせてもらった。裕次郎さんの意向が少しでもあったとしたら
とても光栄なことです」