>>700-701
優作は「TVや映画のアクションもので当たるとそういう役ばっかり来るんだ」と嘆いて
いたので、普通にマジメな役で評価されたい欲がとても大きかった。
またTVで人気者になりつつ、本人は「オレはただのTV俳優で終わりたくない」
「TVの人間に利用されたくない」とも思っていた。

但しそれは見栄っ張りな権威主義でもあって、ある意味、日本のゴールデン街系の
映画屋たち(貧乏な癖に映画人プライドだけはやたら高い人たち)に担ぎ易い「神輿」
「アイコン」として利用された様な気がしてならない。

森田はともかく、名指しすると荒井晴彦系のああいう連中ね。
没後の荒井編集『映芸』別冊優作特集も、大半は映画系の人間の寄稿・談話が主で、TV系の
人間は殆ど出てこない(久世光彦さえ出てこない)奇怪なものだったよ。
たぶん荒井がTVの人間を嫌って殆ど声を掛けなかったんだな。

そもそも日本映画界じたいが70〜80年代の時点で(一握りのヒット作以外)基本的には
「一般の人は誰も観ない」ものに堕していたので(あとはせいぜいレンタルやTV放映の際に観られるぐらいで)、
優作も映画を念願しつつ結局は普段の活動はTVに求めねばならなかった。

どんなに優作が映画を嗜好しつつ、だがそんなものは一般の人は(角川などのヒット作以外は)
「誰も観ない」のである。
70〜80年代のリアル世代にせよ、実際には「TVやレンタルで観た」「実はむしろ優作の
TV作品(太陽やTV版探偵物語など)の方で観ている」人の方が多いだろう。

遺作の『華麗なる追跡』も関わっているのが「岡田晋吉、黒澤満、村川透」など旧知の
人たちばかりで、それは本人も同窓会感覚で出るしかなかっただろうが、但しハリウッド大作
『ブラックレイン』の後に出る程の作品ではないよなとは思う(まあ自分も『華麗なる
追跡』は観てないのですが)
晩年は優作本人も癌を軽く見ていてそれで命を縮めた様ですがね、、『華麗なる追跡』
本人も本当に病を重く見ていたらたぶん出なかった様な話だし、、

優作は「生まれた時代が悪かった(既に日本映画絶望の時代だった)」「本人の映画志向を
見事に貧乏映画屋たちに利用された」、、たった十数年の密度の濃い、だが悲しい芸能
人生だったと思う。個人的には優作伝説・優作神格化には疑問がある。