あの当時、昭和の時代はレコードを出すことにステータスがあったんだよ。
だから猫も杓子もレコードを出して悦に入ったりしていた。

優作さんは抜群の運動神経の持ち主で、演技の堪も鋭かった反面、音楽やファッション方面には無頓着だったからね。
普段放っておくと何を着だすかわからない危なっかしいところがあったと夫人が語っていたり、
喫茶店で打ち合わせの最中にビートルズのゲットバックが流れていたのをふと耳にとめて「おい、これはいい曲だな!」と言って周りが呆気にとられたり。

確かに優作さんの歌はヘタだしわけのわからない類いのオンパレード。
サリンジャーだのヘミングウェイだのを歌詞に差し挟めばインテリで文化的な雰囲気になるみたいな格好の悪い気取りもある。(失笑)
でも、そういう滑稽なところもあっての優作さんだからね。
別に海外に打って出ようとして歌っていたわけでもないんだし。
本物のブルースには及ばないハッタリブルースも味わいがあるよ。
周りにいる仲間内のミュージシャンたちにけしかけられたり感化されてミュージシャンごっこをやって息抜きに楽しんでいたんだろう。