歌舞伎や能楽に匹敵するほどの芸術性を追求し続けたのが小津安二郎。
時代もので古典芸術を凌駕することは困難。従って小津映画に時代劇作品はない。
「晩春」「麦秋」「東京物語」で達した芸術映画の領域に迫る作品は日本はもちろん外国にも少ない(フェリーニ、ヴィスコンティ、ベルィマンくらいか?)。

これに対し、黒澤映画には徹底的に娯楽性を追求した時代劇と、社会性を追求した現代劇とに分けられる。
どちらも黒澤特有の迫力ある映像表現力で成功した。そして、晩年のカラー作品では芸術性にも挑戦したがこれらは大成功とまではいかなかった。

日本映画で、真に芸術映画と呼べるのは小津作品だけだと思う。