しかし『用心棒』のクライマックス(三船敏郎は、ピストルを構えた仲代達矢の腕に包丁を投げてその攻撃を封じ、その手下を斬り捨てていく)に問題がないわけではない。包丁を使うというアイデアももう少し他にあるだろうし、殺陣も緩慢である。この場面と『座頭市血煙り街道』(三隅研次)の充実したクライマックス(雪の降る中、勝新太郎と近衛十四郎が対峙し、勝新は見事な一撃を相手に食らわすことができるが、逆に仕込み杖を叩き飛ばされ、素手で近衛の刃の下に立つ。緊張の一瞬。突然、優勢だと思われた近衛が自分の負けだと言って去っていく。彼の去った道の降り積もった雪の上に残る一筋の血)を較べてみればよい。三隅研次の残したこの美しいシーンを超える殺陣を日本映画はその後、持ちえていない。